【この記事は2021年6月に書きました】
山辺美嗣です。
6月16日 プーチンとバイデンは何を話すのか
イギリスでのG7サミットに引き続いて、スイスのジュネーブで米ロ首脳会談が開催されます。
G7サミット共同宣言は後述するように、3つの文節にわたってロシアを非難しました。いずれの事項も両国の主張は根本から異なるため、法の支配を標榜するプーチンと、プラグマチストのバイデンが、どのような論戦を交わすのか注目したいと思います。
G7サミット共同宣言のロシア非難
6月13日、共同宣言が発表されると、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語で同時に公式の宣言全文が世界に流れました。
日本語の宣言は、2021年6月14日現在、未だに国内で流れていないので、このあとロシアに関連する51節、52節、53節を私の全文翻訳で紹介します。
51節は、ロシアに対して具体的に3つの要求をしているが、ランサムウェアの件は、米ロ首脳会談では、ロシアもメンツがあるので犯罪は断固取り締まると答えるでしょう。
- 化学兵器の使用疑惑に答えること
- 市民社会とメディアに対する取り締まりを停止すること
- ランサムウェア・ハッカーを逮捕すること
52節は、クリミア半島からの撤退要求であるが、米ロ首脳会談では、プーチンは「民族自決の結果」であるというだろうし、バイデンは「力による現状変更」だというので、平行線であろうと思います。
プーチンの民族自決主義は、欧米は無視を決め込んでいますが、アジアやアフリカの民族の独立を重視してきた日本は、プーチンの主張にもっと注目する必要があると考えます。
53節は、ベラルーシの人権弾圧の非難でありロシアに直接関係ないが、ロシア外相がベラルーシを擁護する発言をしている問題です。モスクワメカニズムという語が出てきているように、ロシアは仲介役をしていますね。
共同宣言 ロシア関連個所の私の翻訳です
51.私たちは、ロシアとの安定した予測可能な関係について関心を表明するものであり、相互に利害のある分野には引き続き関与する。
私たちは、ロシアが他国の民主主義体制に干渉するなど不安定化させる行動や悪意のある活動をやめること、また国際的な人権上の義務と公約を果たすことを強く求める。
特に、私たちはロシアに対し次の事項を求める:
土壌での化学兵器の使用について緊急の調査と信頼できる説明、
自立した市民社会とメディアに対する組織的な取り締まりの停止、
ロシア国内から「ランサムウェア」(身代金要求型コンピューターウィルス)で攻撃をするハッカー、仮想通貨を運用し身代金を洗浄する者、その他のサイバー犯罪者の、特定、阻止及び逮捕。
52.私たちは、ウクライナの国境は国際的に認められており、ウクライナの独立、主権および領土の一体性を支持することを改めて表明する。
私たちは、ロシアに対し、緊張を取り除き、国際的義務に従って行動し、ウクライナの東部国境とクリミア半島からロシア軍と物資を撤退するよう要請する。
私たちは、ロシアが仲介者ではなく、ウクライナ東部の紛争当事者であるという見解を確信している。
私たちは、ミンスク合意の実施を確かなものとするためのノルマンディープロセスを支持することを確認し、ロシアとロシアが支援する武装勢力に対して、建設的に関与して停戦に再度応じるよう求める。
私たちは、ウクライナの民主主義と社会制度を強化するため私たちが努力することを再確認し、改革のさらなる進展を応援する。
53. 私たちは、FR4978便の強制着陸や個人ジャーナリストとそのパートナーの逮捕に正に例示されるように、ベラルーシ当局による人権、基本的自由、及び国際法への継続的な攻撃に深い懸念を抱く。
私たちは、責任を負う人々を逮捕し、制裁を課して、ベラルーシの市民社会、自立したメディア及び人権を引き続き支援するために協力する。
私たちは、ベラルーシの現政権に次のことを求める:
方針を変更し、欧州安全保障協力機構(OSCE)のモスクワメカニズムの下に設置された独立専門家委員のすべての勧告を実施すること
社会のすべての部門と有意義な対話を開始すること
そして、新しい自由で公正な選挙を行うことである。