備蓄米放出はコメ農家を崩壊させる大愚策だ 

2024年末から国内のコメ価格が高騰していることが話題になりました。政府はこの状況を受け、備蓄米の放出を行いました。しかし、これは本当に必要な措置だったのでしょうか?

ここでは、コメ価格高騰の背景や政府の対応の是非について考察します。

なぜコメ価格が上昇しているのか

現在、コメの価格が上昇している理由はいくつか考えられます。

まず、コメの需要量が長期的に減少を続けているなかで、供給量自体が減少をたどってきていることが挙げられます。実際に、農林水産省の統計によれば、近年のコメの生産量は減少傾向が続いています。これは、農業人口の減少が高齢化だけでなく災害による農地崩壊の影響を受けていることも大きいでしょう。

市場が小さくなってくると予想外の要因によって思いのほかに需給が乱れることはありうることです。例えば、昨年の外国人訪日数は記録的でした。日本食を目当てにする観光客も多く、コメ食は大変な人気だったと報じられています。この影響が年の後半になって需給に影響してきたことは大いに考えられます。

もう一つの要因として、コメの買い付けに異業種や外国人が参入していることが指摘されています。特に、中国人バイヤーが大量に購入し、転売しているという報道もありますが、くちこみ情報の段階なので何とも言えませんが、このような動きが価格の上昇を招いている可能性があります。

さらに、一部では「大阪万博」や「ふるさと納税」の影響で「あてこみ買い付け」や「あてこみ保管」があり、そのためコメの流通が偏っているのではないかという指摘もありま。これが事実であれば、単に投機目的の買い占めだけでなく、政策的な要因も影響しているかもしれません。

政府の介入は必要なのか?

政府は、コメ価格の高騰を抑えるために備蓄米を放出しています。しかし、これは本当に適切な対応なのでしょうか?

コメ価格は長期的に見て本当に高すぎるのか?

日本において食糧管理制度を廃止して以降は、コメ価格は本源的に市場原理に基づいて決まるべきものだとしてきました。現在の価格上昇は、需給バランスの変化によるものであり、ある程度の価格上昇は自然な流れとも言えます。

むしろ、コメの価格が適正に上がることで、農家の収益が改善し、持続可能な農業が実現しやすくなるという側面もあります。

また、円高により輸入する原料や資材費の上昇で多くの品物やサービスが値上がりしています。長期的な視野で見たとき、こうした他の消費財と比べて、本当にコメ価格が「高騰」と呼ぶほどに上昇しているのでしょうか?

政府が十分に調査をしているのかは検証する必要があるでしょう。

備蓄米放出で政府が介入することのリスクは何か?

政府が備蓄米を放出することには、いくつかの問題点があります。

  1. 市場の混乱を招く可能性
    政府が市場に介入することで一時的に価格が下がったとしても、介入をやめれば元に戻るため根本的な問題の解決にはなりません。むしろ、市場が不安定になり、農家の経営が圧迫されるリスクがあります。
  2. 備蓄米の管理はうまくいっている
    日本のコメ政策はこれまでも適切に運営されており、備蓄米の管理も食料安全保障の観点から問題なく行われています。現在の状況で政府が焦って備蓄米を放出する必要はないのではないでしょうか。
  3. 長期的な農業政策との整合性
    価格の高騰を抑えようとするあまり、政府が過度に介入すると、農家の利益が守られず、結果的に生産量の減少を招く可能性があります。これは、将来的な食料安全保障の観点からも問題となるでしょう。

本当に国がすべきこととは?

食料安全保障は、世界の国々が最も重要視している政策課題です。

何故ならば、食料は国民の生存に関わる「安全保障」を確保することが必要な物資であると同時に、世界の貿易を発展させるため「公平で自由な市場」で取引されなければならない物資でもあるからです。

そのため、各国政府は「市場に介入せず、国内農業者を支援する」ことで食料安全保障を確保してきました。

この観点から判断して、今回の政府方針は正しいのでしょうか?

コメの価格形成に影響を与えているかもしれない要因を先に指摘しましたが、これらの要因について先ず詳細な調査を行うべきでしょう。原因がどこにあるのか、突き止めないで対策を議論することはあり得ない話です。

  1. 農業人口の高齢化による生産力の減退
  2. 災害による農地崩壊
  3. 外交人観光客の増加と日本食の人気
  4. コメ買い付けへの異業種や外国人の参入

「万博」と「ふるさと納税」の影響を明らかにする

一部では、大阪万博の関連事業やふるさと納税の返礼品として大量のコメが消費されていることが、供給不足の要因になっているのではないかとの指摘もあります。もしこれが事実であれば、コメの供給不足は一時的な政策需要によるものであり、市場介入によって価格を操作することが適切ではない可能性があります。

政府が本当にすべきことは、こうした指摘が正しいのかを検証し、もし公的な需要政策が原因であれば、需給や価格に対して中立となるような新たな措置を制度化することではないでしょうか?

米価の適正化と持続可能な農業を構築する支援

むしろ、日本のコメ農家が適正な価格で販売できるような環境を整えることこそが重要です。そのために、以下のような政策が考えられます。

  • 農業の生産性向上支援
    高齢化が進む農業分野において、スマート農業技術の導入を促進し、生産性を向上させるために農家支援を行う。
  • 輸出市場の拡大
    日本の高品質なコメを海外市場に積極的に売り込むことで、新たな需要を生み出す。
  • 直販やブランド化の推進
    農家が直接消費者に販売できるブランド力を強化し、中間マージンや物流管理費を削減することで、農家の収益力を向上させる。

まとめ

現在の米価高騰に対して、政府が備蓄米を放出することで対応しようとしていますが、これは本当に適切な判断なのでしょうか? むしろ、米価がある程度上がることで農家の収益が確保され、持続可能な農業が可能になります。

また、供給不足の原因として、大阪万博やふるさと納税の影響等が指摘されており、まずはそれらの実態を明らかにすることこそが政府の役割ではないでしょうか。

日本の米政策はこれまでも適切に運営されており、備蓄米の管理も問題ありません。このまま過剰な市場介入を続けるのではなく、長期的な視点で農業の持続可能性を考えた政策を進めることが求められます。