米国など世界各地でで暗躍しているサイバーギャングについて、6月にバイデン大統領とプーチン大統領が話しあっていることを以前に紹介したが、いよいよ一味が逮捕されたとのニュースが入ってきた。
11月の逮捕
BBCによれば、ルーマニア警察と米司法省、欧州警察機構(ユーロポール)は11月8日、史上最大規模の金銭を奪ってきたサイバーギャング「REvil(レヴィル)」に対する合同作戦を行ったと発表した。
インターネット上と現地で行われた作戦により、11月4日にルーマニアで2人、ウクライナで1人が逮捕された。逮捕されたルーマニア国籍の2人は、ランサムウェアを使って5000人から合計50万ユーロ(約6500万円)を奪った疑いが持たれている。
アメリカ当局は今回、レヴィルから600万ドル相当の暗号通貨を取り戻したと発表した。レヴィルの幹部は数週間前に、当局の捜査が厳しくなり、活動停止を余儀なくされていると語っていた。
今年2月以降の逮捕
ユーロポールは、レヴィルに標的を絞った作戦「ゴールドダスト」を立ち上げている。今年2月以降、ルーマニアやウクライナ、韓国、クウェートなどで合わせて7人を逮捕した。
米司法省は、10月にポーランドで逮捕されたウクライナ国籍のヤロスラフ・ヴァシンスキイ容疑者(22)が、米フロリダのソフトウエア会社カセヤに対する大規模ハッキングにかかわっていたとみている。カセヤに対するハッキングにより、世界各国の1500社が影響を受けたほか、2億ドル以上がビットコインやモレロで支払われたという。米当局はヴァシンスキイ容疑者の身柄引き渡しを要求している。
米国の国際手配
米当局は、ロシア国籍のユフゲニイ・ポリアニン容疑者(28)も、詐欺や資金洗浄(マネーロンダリング)などへの共謀の疑惑で訴追している。ロシアが自国民をアメリカに引き渡す可能性は低いため、ポリアニン容疑者も他のロシア人ハッカー同様、指名手配リストに名を連ねている。
米財務省はこのほか、アメリカ国内でのランサムウエア事件に絡み、2人を制裁対象としたと発表。
さらに、仮想通貨取引業者「Chatex(チャテックス)」を、「ランサムウェアを扱うハッカーに資金取引の手段を与えている」と非難した。
レヴィルの手口
レヴィルは近年、国際的な企業に対する大規模なハッキング行為を行ってきたとされる。
関係当局によると、今年5月には、世界最大の食肉加工会社JBSに対し、コンピューターシステムを攻撃して「身代金(ランサム)」を要求する、いわゆる「ランサムウェア」での攻撃を行った。攻撃により、JBSは世界各国の製造拠点で数日間の操業停止を余儀なくされ、1100万ドル(約12億4000万円)の身代金を支払った。
JBSとは
- 世界15カ国に150以上の工場を持つ世界最大の食肉業者
- ブラジルで1953年、牧場主のジョゼ・バチスタ・ソブリーニョ氏が立ち上げた
- 現在は世界中に15万人以上の従業員を抱える
- 同社顧客にはスーパーマーケットやファーストフードのマクドナルドなどが含まれる
- アメリカでは、5つの大規模工場があり、同国で流通する牛肉の約25%、豚肉の約20%の加工を担っている
このほか、外貨両替の大手トラベレックスは数カ月にわたる妨害を受け、コンピューターシステムを数週間止めざるを得なくなった。
BBCのジョー・タイディー記者は「各国の警察が参加した今回の作戦では、その協力態勢や積極性に目を見張るものがあった。また、あらゆるサイバー犯罪者に、当局の能力を示すことにもつながった。恐らく今回の作戦が、レヴィルの最後になるだろう」と話している。
ロシアは?
多くの犯罪者がロシアで訴追を逃れながら活動しているとみられる。
6月のバイデン大統領とプーチン大統領の会談もサイバーギャングの取締についてであった。しかしプーチン大統領は「サイバー犯罪はロシア以外の国で起きていることだ」と、関与しない構えを取り続けている。