地方議員は国会議員の下部組織であるかのように錯覚されています。
ときには、地方議員が使い捨てられるかのような序列も存在してます。
この記事では、元官僚・元県議会議長、いわば国と地方、双方の現場経験者が、その原因をさぐるとともに、他の先進国の様子をお伝えします。
こんな方に
- 国会議員と地方議員の関係に疑問をお持ちの方
- 外国ではどうやって国会議員を選ぶのか知りたい方
- 地方議員の経験や知恵が、ないがしろにされていると感じている方
地方議員は国会議員より下なのか
志ある方ならよくお分かりの事と思います。
国会議員が偉くて地方議員が劣っているわけではないのです。
国会議員だろうが、地方議員だろうが、志の高い人とそうでない人、能力のある人とそうでない人がいるだけです。
しかし日本の現状は、複雑な事情(おいおいご説明していきます)で、志や能力が無視されて議員が誕生します。
他の先進国では、地方議員や首長から国会議員が選ばれる
地方で住民と共に自治を行い、そこでしっかり民主主義を学んで初めて国会議員となっていくしくみがあるからです。
有権者とじかに接して地方自治を経験することが、議員にとって「民主主義の学校」になるというわけです。
志などの適性を有権者に観察される機会もない。
いきなり有権者から遠く離れた地で働く国会議員が誕生する。
それでは先進国ではどのように国会議員が誕生するのか、代表的な例をご紹介します。
フランス、アメリカ、ドイツ、イギリスの場合
フランス
地方議員が現職のまま国会議員(国会下院)を務めています。
国会下院は「国民議会」と呼ばれていますが、その名の通り各地の「国民」代表者で構成するのですが、その任に当たるのは地方で職を得て働いてる人がふさわしい、つまり国会議員(国会下院)は原則的に他の職と兼務できると法律に定めています。ただし、自治体の首長と地方議会の正副議長は2017年からは兼務できない職種となりました。
世界で最初の民主革命がおきた国フランス。
その下院である「国民議会(定数577人)」は、全議席が小選挙区制の選挙で選ばれます。現在の構成は、州議会議員71人、県議会議員139人、市町村議会議員379人で、つまり
アメリカ
優秀な地方議員が国政に参画する仕組みになっています。
地方議員にあたる州議会議員が現職のまま、日本の国会議員にあたる連邦議会議員に立候補できるしくみなのです。
45の州では、州知事と州議会議員は、現職のまま大統領と上下院の連邦議会議員に立候補できます。
落選しても現職を失うことがありません。
つまり、地方議員としての経験をつんだ優秀な議員は、躊躇なく国会議員に手をあげて予備選挙、その後の本選挙に立候補できる仕組みにしているのです。
(アリゾナなどの5州だけが、立候補にあたり辞職が必要です)
地方議員が、国政選挙で落選しても、地方議員を失職しない。
ドイツ
国会上院は全員が州代表の地方議員です。
連邦制による分権国家であるドイツの上院は「連邦参議院(定数69人)」と呼ばれています。
全定数が地方行政府である16の州に人口比例で割り振られ、州の首相や大臣が連邦議員となります。
州政府は議院内閣制であり、州の首相や大臣は全員が現職の州議会議員なのです。
イギリス
地方議員が予備選挙で国政に挑戦しています。
イギリスは地方議員らに予備選挙で国会を目指すチャンスを設けています。
二大政党が定着したイギリスでは、党本部が将来の政治家をめざす若い優秀な人材をいかにリクルートするかを重要視しています。
選挙は党で行い、候補者にはほとんどお金がかからない、人材本位で選ぶ仕組みになっています。
立候補を希望する人は、まず党本部が備えている候補者名簿(保守党の場合3200-3300名程度で、地方議員現職も申請できる)に登載申請します。
その後、立候補したい小選挙区の党員代表機関である総務委員会に申請します。
予備選挙は、地方議員など多くの希望者が挑戦でき、出馬する候補者に金銭的負担はありません。
「地方代表が国会議員となる制度の導入」、日本でも検討されたが「消えた」
地方6団体のうち「全国市長会」では、2012年に「地方の首長が国会議員を兼務することを検討するべきだ」との提言が出されたのですが、残念ながら現在その議論は続いていないようです。
俺たちが国会議員でいられなくなるかもしれないじゃん。
この件は放置するのが一番。
そこはあうんの呼吸。
「地方自治は民主主義の学校」
このことばは、有権者から見える「地方自治」の土俵で、しっかり民主主義を実践し習得する「議員の学校」という意味です。
地方自治で力量が認められない議員に国政は任せられない、という有権者の意思があるように思えます。
議員にふさわしい人材を議員として輩出していく機能を、日本でどのように実現していくか。
他の先進国の例をそのまま導入すればよいといった短絡的なものではないでしょうが、みなさんと考えて行く価値はあるように思います。