地方はなぜ3割自治なのか、地方自治体の自立が困難な理由はどこにあるのか

地方には、公の仕事(公的支出)の7割があるのに、自己資金は3割しかありません。どうしてそのようなことになったのでしょうか?この記事では、経緯をたどり、原因を探ります。

2000年以降、地方の仕事は増えたのに、自己資金は増えなかった

国と地方は、それぞれ金額の比率ではどれほどの公の仕事の現場をもっているのでしょうか。

2000年より以前は、公的な支出のうちわけは国:地方=40:60と、地方が6割をしめていました。ところが収入は、国の収入:地方の収入=80:20と、地方は60の仕事をしているのに20しか収入がないので、国から40の資金を再配分してもらっていました。自己資金比率は60分の20(3分の1)しかないので、これを3割自治とよんできたのです。

これではいけないということで、2000年以降に「三位一体改革」や「地方分権推進」が行われましたが、結果は逆効果に。地方の仕事は70にふえたのに税収は20のまま。自己資金比率は3割を下回って、国への依存は逆にふえてしまいました

最近は大きな経済対策を毎年のように行っていますが、地方で実施される対策事業の財源も国債、つまり100%国のお金ですからますます国への依存はふえています。

国と地方は、どんな仕事をしているのか

では、公の仕事の現場はどのようなものか、見ていきましょう。

国の現場はどこ?:現在の国の現場は30と言いましたが、その内容を見ると、政府行政費用、防衛費、条約等に基づく費用、年金費、国直轄の公共事業費、災害復旧費などが国の専管分野です。

地方の現場はどこ?:地方の現場70の内訳は、医療保険費、高齢福祉費、障害福祉費、社会福祉費、教育費、一般公共事業費、中小企業振興費、農林水産業振興費など、支援する相手方の顔がわかる地方管轄の分野です。しかし、この事業費のうち自前の財源は20だけ。50は国から配分されるものであり、地方は使い方の工夫もできません。地方は国の下請になっているといってもよいでしょう。

国と地方:実際の金額をみてみよう

国と地方の収入と支出を令和3年度の実際の金額でみていきましょう。

国の一般会計106兆円 + 地方の一般会計75兆円 = 重複計上を除く国と地方の公的支出の合計 = 160兆円  これは我が国のGDP総額550兆円の3割に相当する莫大な金額です。

これを、収入面から見ると

国の収入 = 国税収入等の一般財源62兆円 + 国債44兆円
地方の収入 = 一般財源63兆円(地方税収入等の独自税財源40兆円 + 地方交付税等の国からの税の再配分23兆円 )+ 地方債12兆円

 

支出のほうからも分析していきましょう。国と地方の一般会計合計160兆円は、どこの現場に支出されているかを見ます。

地方の現場に110兆円   国が直接管轄する現場に50兆円

地方の現場の収支を更に詳しく見ていきましょう。

地方の現場で支出される110兆円の財源の内訳 = 地方独自財源40兆円 + 国からの税の再配分23兆円 + 地方債11兆円 + 国からの補助金35兆円

 

地方税収入等の独自財源は110分の40【3割自治】、国に依存する財源は110分の70【7割依存】、その構造がハッキリと見えてきます。

「地方債」も多くは後から国が補填する仕組みですので、これに「国からの税の再配分」と「国からの補助金」をくわえた、合計70兆円はぜんぶ国に依存しています。

しくみが変わらない理由

このしくみは戦後ずっと変わっていません。

一般財源の中心は税金。そのうち国税が62兆円と地方税が40兆円ですが、この6対4の割合が変わらないのは「財源を握るものが権力を握る」からです。地方税を増やしていくための戦略については、困難ではありますが無理ではないと考えますので、のちのち取りあげていきます。

地方間競争は国の思うつぼ

市場競争が経済成長の原動力です。であれば、地方間競争が地方発展の原動力、と言っても間違いがなさそうですが、実際はそうではありません。

市場競争は「見えざる神の手」といわれる自由競争による資本の最適配分ですが、地方間競争は「見える国の手」がもっている許認可や補助金・交付金というパイの奪い合いです

地方の活性化を狙いとする国の「地方創生交付金」は、よい地方創生事業を国がえらんでお金をだすものです。地方から競って事業が提案されて盛り上がりました。返さなくてもよい国のお金がくるなら、つかわなきゃ損だ。かけこみで作った見通しで事業をスタートしたものの、結果的に投資した地方の自己資金は回収できず、維持費負担だけがのこった事業もすくなくありません。

以前、民活法やリゾート法で経験したことと同じ失敗がくり返されました。

こうして、地方の弱い資金体質がつづくことで、結果「予算配分権」をもつ国の強い立場が維持されることになってしまっているのです。

失敗を繰り返さない

いつまで同じ失敗を繰り返すのでしょうか。

地方はもう目覚めるときです。

「ひとのお金」(国の補助金)を取りあい振り回されるのではなく、「自分のお金」(地方税収)をふやすことに努力してかしこく使うという本道にもどること、すなわち「地方への補助金を廃止して」「地方税収という地方の一般財源を増やす」、戦後一貫して地方が求めてきたこの要求を私たちで実現しようではありませんか。

****好きあった寛一とお宮だったが、ダイヤモンドに目がくらみ金持ち息子と結婚したお宮はその後不幸になっていく。一方の寛一は貧困のなかから金貸しとして成功していく****金色夜叉は古い小説ですが、いまでも教訓は生きています。
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MiraiProject 山辺美嗣(やまべみつぐ)

政治・行政プロジェクトのコンサルタント

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通産官僚・国連職員を経て、地方議員歴24年
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